第30回被服衛生学セミナーのご報告

第30回被服衛生学部会セミナー概要報告

 第30回被服衛生学部会セミナーは、平成23年8月29日(月)~31日(水)、長野県飯山市の文化北竜館にて、「災害と被服衛生学」を総合テーマとして開催されました。下記のプログラムにて、特別講演5件、研究事例報告9件、総合討論、座談会、30周年記念シンポジウム と盛りだくさんな内容で、参加者は正会員36名,学生5名,企業展示4社と、震災の後でもあり、参加人数は少なめでしたが、例年になく2泊3日という長いセミナーでしたが、記念の会になりました。お天気に恵まれ、ご参加いただきました先生方には、活発に討議に参加いただきました。
被服衛生学総合討論「災害と被服衛生学」では、東北地区の先生方からいただいたFAXを話題提供として、討論の口火を切ることができました。まだ渦中にある被災状況を、今後の被服衛生学の研究活動にどういかしていくべきか、いくつか提案されました。総合テーマ「災害と被服衛生学」に対しては、部会として、今後できることを進めていこうということになりました。
また、30周年記念シンポとして、各方面の先生方から「被服衛生学の未来」について話題提供いただきました。さらに、名誉会員の先生方から被服衛生学とご自身との関わりについて夜の会の語らいとして我々後に続く者たちへの提言をいただき、これも、記念の会としてふさわしいプログラムとなりました。
エクスカーションとして、飯山市の高橋まゆみ人形館を見学いただいたり、野沢温泉の外湯入浴を楽しんだりしていただいたことも、日程がゆっくりとした2泊3日だからこそできたものと考えております。
お忙しい中、予定を繰りまわして、ご参加いただきました先生方に感謝申し上げます。
また、節電休校中においても、準備などに尽力くださった文化学園大学機能デザイン学研究室の方々にも心から感謝いたします。ありがとうございました。

プログラム
8月29日(月)
14:30~15:30  役員会 文化北竜館第2ゼミ室
16:10~17:00  特別講演1  栃原裕先生 (九州大学大学院 教授)
「防護服着用時の暑熱負担とその評価法」
17:10~18:00  特別講演2  斉藤文明氏 (アゼアス(株))
「災害現場で必要とされる防塵服について-福島第1原発、鳥インフルエンザ、アスベスト対策等で使用された防護服-」
18:00~18:30  臨時総会
19:30~21:00  座談会「 私と被服衛生学 」
話題提供: 鎌田佳伸氏(元実践女子大学)、田口秀子氏(元秋田大学)、杉本弘子氏 (元京都教育大学)

8月30日(火)
9:00~10:15 特別講演3  中島清志氏 (伝統工芸士)
「ユネスコ無形文化遺産登録 重要無形文化財技術指定越後上布・小千谷縮 越後上布ができるまで 」
10:30~11:00 特別講演4  森川智佳子氏 (長野県栄村住民福祉課 保健師)
「長野県北部地震における支援活動の実際~保健師としての経験から~ 」
11:00~12:00 被服衛生学総合討論 テーマ「災害と被服衛生学」
13:00~15:00 被服衛生学部会30周年記念シンポジウム
テーマ「被服衛生学の未来を語る」
コーディネータ 諸岡晴美氏 (京都女子大学)
シンポジスト  今村律子氏 (和歌山大学),薩本弥生氏 (横浜国立大学),田村照子氏 (文化学園大学),石丸園子氏 (東洋紡㈱),山本 貴則氏 (大阪府立産業技術総合研究所)
15:00~18:00 エクスカーション 高橋まゆみ人形館見学、北竜湖周辺散策
18:30~20:30 懇親会 (本館 メイプルレストラン)

8月31日(水)
9:00~10:00  特別講演5 加藤真介氏 (横浜薬科大学)
「放射線の基礎とその人体影響 」
10:00~11:30  研究事例報告 「私の研究紹介」 9件
1. 「ナースウェアの運動機能性、温熱的快適性、細菌透過性に関する研究」
内田幸子(高崎健康福祉大学)、田村照子、小柴朋子、有泉知英子(文化学園大学)、森本美智子(兵庫県立大学)、田辺文憲(山梨大学)
2. 「ユニバーサルデザインビジネス啓蒙のための教育プログラムの開発」
丸田直美(共立女子大学)、加藤登志子(文化ファッション大学院大学)、菊池直子(岩手県立大学盛岡短期大学部)、斉藤秀子(山梨県立大学)
3. 「車いす使用者のためのリフォームジーンズの着心地について~衣服圧と着用感からの検討~」
平岩暁子、平林由果、飯田信子、青山喜久子(金城学院大学)
4. 「腹部と大腿部への圧迫と知的作業能」
深沢太香子(京都教育大学)、藤井亜由美(福岡女子大学)、西島美加(福岡県立香椎高等学校)
5. 「クールビズオフィスにおける執務者の着衣量調査」
西原直枝・田辺新一(早稲田大学)
6. 「衣服による摩擦が皮膚表面微細三次元構造に及ぼす影響-走査型共焦点レーザー顕微鏡を用いて-」
松井有子、田村照子(文化学園大学大学院)
7. 「肌着用編布の風合い評価と熱・水分移動特性」
井上真理、黄 暁明(神戸大学大学院)、池島宏亮、神家春奈 (神戸大学)
8. 「衣服の水分率と湿潤感覚の関係」
前田亜紀子、岩瀬静香、内田穂奈美(長野県短期大学)
9. 「ヒール高の相違が歩行に及ぼす動態力学的影響」
川上智恵(文化学園大学大学院)、有泉知英子、永井伸夫(文化学園大学)、田村照子 (文化学園大学大学院)

第30回被服衛生学部会セミナー実行委員会(関東地区担当)
30周年記念事業実行委員会 委員長  諸岡晴美(京都女子大学)、
30周年記念事業実行委員会 副委員長 菅井清美(新潟県立大学)、
三野たまき(信州大学)
顧問  田村照子(文化学園大学)
実行委員 有泉知英子(文化学園大学)、内田幸子(高崎健康福祉大学)、
斉藤秀子(山梨県立大学)、薩本弥生(横浜国立大学)、
佐藤真理子(文化学園大学)、嶋根歌子(和洋女子大学)、
須田理恵(文化学園大学)、西原直枝(早稲田大学)、
丸田直美(共立女子大学)

(第30回被服衛生学部会セミナー実行委員長 文化学園大学 小柴朋子 記)

第27回被服衛生学部会夏季セミナーのご報告

第27回被服衛生学部会夏季セミナー報告
金城学院大学生活環境学部 成瀬正春

概要
標記の夏季セミナーは、名古屋市のトヨタテクノミュージアム、竹田庄九郎邸および久野染工場で、2008年8月8~9日の2日間の日程で開催した。皆様方のご協力によりまして、成功裡に終えることができました。これひとえに、ご多忙中の中、快くご講演と実習をお引き受けくださいました講師の先生方ならびにセミナーにご参加いただきました皆々様のお陰です。実行委員会一同より感謝申し上げます。
セミナーの総合テーマは、「被服衛生とナチュラルファイバー」です。初日は、トヨタテクノミュージアム中ホールを会場として、究極の吸湿速乾素材であるスポーツウールの魅力に迫りました。さらに、イタリアの「インパナトーレ」についても紹介しました。インパナトーレ作品の展示も開催しました。二日目は、会場を有松・鳴海地区の竹田庄九郎邸および久野染工場に移しました。絞りは、伝統的なクールビズ素材であるとともに伝統工芸品です。講演を聞いた後、参加者に持参していただいたTシャツまたはブラウスの絞り染め実習を行いました。
参加していただきました皆様には、我が国における被服衛生学の関心の高まりの中、ナチュラルファイバーの魅力とその卓越した機能性に触れていただけたと思っています。

開催期間
2008年8月8~9日の2日間である。
会場
1)2008年8月8日
名古屋市のトヨタテクノミュージアムで行った。
2)2008年8月9日
有松・鳴海地区の竹田庄九郎邸および久野染工場で行った。

プログラム
1)2008年8月8日
12:00~ 受付開始
12:50~ 開会の辞(部会長)
13:00~ トヨタテクノミュージアム見学
内 容:人類が発明した最も古い技術のひとつに”紡ぐ・織る”がある。本物の紡織機械90台の展示により、実演を交えて紹介されていた。
14:00~ 講演Ⅰ
テーマ:SPORTWOOL®(スポーツウール)
講 師:田中孝幸氏
(ザ・ウールマーク・カンパニー)
内 容:ウールは吸湿性にすぐれ、しかも吸った水分を外に逃がす天然の機能素材です。この機能に着目した究極の「吸湿速乾素材」としてのスポーツウールの紹介があった。
15:00~ 講演Ⅱ
テーマ:「産地を超えて動き出した日本型インパナトーレ! -対等の協業から加工の組み合わせ自在-」
インパナ事業
講 師:水谷常夫氏
(みづほ興業株式会社代表取締役社長)
内 容:イタリアが一貫して世界をリードするテキスタイルやファッションを生み出してきた要因の一つとして「インパナトーレ」が指摘されている。この「インパナトーレ」の紹介があった。
16:00~ 研究事例報告
1)Alleviation of Heat Strain by Cooling Different Body Areas During Red Pepper Harvest Work at WBGT 33℃ 1) Seoul National University, 2)Kyushu University Jeong-Wha Choi1), Myung-Ju Kim1), Joo-Young Lee2), Yutaka Tochihara2)
2)軽度ヒートショックに対する生理心理反応,実践女子大学 齋藤千恵,野尻佳代子,山崎和彦
3)性周期における皮膚血流-発汗連関の関係、神戸女子大学 安坂友希
4)小学校5年生における基礎縫いの習熟度と作品に対する満足感の関係 -教示のタイミングが作品に与える影響-信州大学 三野たまき
17:30~ 臨時総会
18:00~ 懇親会
会 場:トヨタテクノミュージアム
(写真 semi27-1)トヨタテクノミュージアムにて
-動力の庭-
内 容:トヨタテクノミュージアム内の特設会場で、生演奏を聞きながらの優雅なひとときを楽しんだ。

2)2008年8月9日
9:30 名鉄・有松駅集合
10:00~竹田庄九郎邸の見学
内 容:市指定有形文化財・都市景観重要建築物である。建物は、絞問屋の伝統的形態を踏襲。現在も日本最古の有松絞問屋として有名である
(写真 semi27-2)竹田邸にて
(写真 semi27-3)竹田邸にて
10:45~ 講演Ⅲ
テーマ:有松絞りの変遷
講 師:竹田耕三氏
(絞り作家、絞工芸美術協会会長)
内 容:染め際の美─地白と藍のコントラストの力強さは、染織品の中でも最高のものといわれている。藍染め絞りの着物は一般的に地味なイメージであるが、そうではなく、逆に存在感のある華やかさに満ちている。「藍染め」の魅力に関する紹介があった。
11:30~ 講演Ⅳ
テーマ:天然繊維への挑戦
-有松絞り・ATSUMARI-
講 師:久野剛資氏
(絞り染織家、久野染工場取締役)
内 容:天然素材を中心に、ハンドメイド感覚を取り入れ日常の目線で普段の生活スタイルとトレンドに流されない価値観(嗜好)を大切にしながら幅広い展開への試みの紹介があった。
12:30~ 昼食
13:45~ 久野染工場の見学と実習
内 容:各自が持参した薄地のセルロース系繊維の服の絞り染めを行った。絞り染め実習にてリメイクされた服は、持ち帰って、自分流のファッションを楽しんでいただいた。
15:45~ 閉会の辞(副部会長)
(写真 semi27-4)久野染工場にて
16:00  名鉄・有松駅解散

謝辞
セミナーを実施するにあたって、トヨタテクノミュージアム、竹田嘉兵衛商店および久野染工場を初めとする多く関係機関のご協力を得ました。心より感謝申し上げます。

実行委員会メンバー
実行委員長 成瀬正春(金城学院大学)
実行委員  斉藤秀子(山梨県立女子短期大学)
長井茂明(愛知教育大学)
平林由果(金城学院大学)
前田亜紀子(長野県短期大学)
間瀬清美(名古屋女子大学)
三野たまき(信州大学)
内田有紀(金城学院大学)
平岩暁子(金城学院大学)