第27回被服衛生学部会夏季セミナーのご報告

第27回被服衛生学部会夏季セミナー報告
金城学院大学生活環境学部 成瀬正春

概要
標記の夏季セミナーは、名古屋市のトヨタテクノミュージアム、竹田庄九郎邸および久野染工場で、2008年8月8~9日の2日間の日程で開催した。皆様方のご協力によりまして、成功裡に終えることができました。これひとえに、ご多忙中の中、快くご講演と実習をお引き受けくださいました講師の先生方ならびにセミナーにご参加いただきました皆々様のお陰です。実行委員会一同より感謝申し上げます。
セミナーの総合テーマは、「被服衛生とナチュラルファイバー」です。初日は、トヨタテクノミュージアム中ホールを会場として、究極の吸湿速乾素材であるスポーツウールの魅力に迫りました。さらに、イタリアの「インパナトーレ」についても紹介しました。インパナトーレ作品の展示も開催しました。二日目は、会場を有松・鳴海地区の竹田庄九郎邸および久野染工場に移しました。絞りは、伝統的なクールビズ素材であるとともに伝統工芸品です。講演を聞いた後、参加者に持参していただいたTシャツまたはブラウスの絞り染め実習を行いました。
参加していただきました皆様には、我が国における被服衛生学の関心の高まりの中、ナチュラルファイバーの魅力とその卓越した機能性に触れていただけたと思っています。

開催期間
2008年8月8~9日の2日間である。
会場
1)2008年8月8日
名古屋市のトヨタテクノミュージアムで行った。
2)2008年8月9日
有松・鳴海地区の竹田庄九郎邸および久野染工場で行った。

プログラム
1)2008年8月8日
12:00~ 受付開始
12:50~ 開会の辞(部会長)
13:00~ トヨタテクノミュージアム見学
内 容:人類が発明した最も古い技術のひとつに”紡ぐ・織る”がある。本物の紡織機械90台の展示により、実演を交えて紹介されていた。
14:00~ 講演Ⅰ
テーマ:SPORTWOOL®(スポーツウール)
講 師:田中孝幸氏
(ザ・ウールマーク・カンパニー)
内 容:ウールは吸湿性にすぐれ、しかも吸った水分を外に逃がす天然の機能素材です。この機能に着目した究極の「吸湿速乾素材」としてのスポーツウールの紹介があった。
15:00~ 講演Ⅱ
テーマ:「産地を超えて動き出した日本型インパナトーレ! -対等の協業から加工の組み合わせ自在-」
インパナ事業
講 師:水谷常夫氏
(みづほ興業株式会社代表取締役社長)
内 容:イタリアが一貫して世界をリードするテキスタイルやファッションを生み出してきた要因の一つとして「インパナトーレ」が指摘されている。この「インパナトーレ」の紹介があった。
16:00~ 研究事例報告
1)Alleviation of Heat Strain by Cooling Different Body Areas During Red Pepper Harvest Work at WBGT 33℃ 1) Seoul National University, 2)Kyushu University Jeong-Wha Choi1), Myung-Ju Kim1), Joo-Young Lee2), Yutaka Tochihara2)
2)軽度ヒートショックに対する生理心理反応,実践女子大学 齋藤千恵,野尻佳代子,山崎和彦
3)性周期における皮膚血流-発汗連関の関係、神戸女子大学 安坂友希
4)小学校5年生における基礎縫いの習熟度と作品に対する満足感の関係 -教示のタイミングが作品に与える影響-信州大学 三野たまき
17:30~ 臨時総会
18:00~ 懇親会
会 場:トヨタテクノミュージアム
(写真 semi27-1)トヨタテクノミュージアムにて
-動力の庭-
内 容:トヨタテクノミュージアム内の特設会場で、生演奏を聞きながらの優雅なひとときを楽しんだ。

2)2008年8月9日
9:30 名鉄・有松駅集合
10:00~竹田庄九郎邸の見学
内 容:市指定有形文化財・都市景観重要建築物である。建物は、絞問屋の伝統的形態を踏襲。現在も日本最古の有松絞問屋として有名である
(写真 semi27-2)竹田邸にて
(写真 semi27-3)竹田邸にて
10:45~ 講演Ⅲ
テーマ:有松絞りの変遷
講 師:竹田耕三氏
(絞り作家、絞工芸美術協会会長)
内 容:染め際の美─地白と藍のコントラストの力強さは、染織品の中でも最高のものといわれている。藍染め絞りの着物は一般的に地味なイメージであるが、そうではなく、逆に存在感のある華やかさに満ちている。「藍染め」の魅力に関する紹介があった。
11:30~ 講演Ⅳ
テーマ:天然繊維への挑戦
-有松絞り・ATSUMARI-
講 師:久野剛資氏
(絞り染織家、久野染工場取締役)
内 容:天然素材を中心に、ハンドメイド感覚を取り入れ日常の目線で普段の生活スタイルとトレンドに流されない価値観(嗜好)を大切にしながら幅広い展開への試みの紹介があった。
12:30~ 昼食
13:45~ 久野染工場の見学と実習
内 容:各自が持参した薄地のセルロース系繊維の服の絞り染めを行った。絞り染め実習にてリメイクされた服は、持ち帰って、自分流のファッションを楽しんでいただいた。
15:45~ 閉会の辞(副部会長)
(写真 semi27-4)久野染工場にて
16:00  名鉄・有松駅解散

謝辞
セミナーを実施するにあたって、トヨタテクノミュージアム、竹田嘉兵衛商店および久野染工場を初めとする多く関係機関のご協力を得ました。心より感謝申し上げます。

実行委員会メンバー
実行委員長 成瀬正春(金城学院大学)
実行委員  斉藤秀子(山梨県立女子短期大学)
長井茂明(愛知教育大学)
平林由果(金城学院大学)
前田亜紀子(長野県短期大学)
間瀬清美(名古屋女子大学)
三野たまき(信州大学)
内田有紀(金城学院大学)
平岩暁子(金城学院大学)

第26回被服衛生学部会夏季セミナーのご報告

第26回日本家政学会被服衛生学部会 夏季セミナー報告
実行委員長 嶋根歌子

 第26回被服衛生学部会夏季セミナーは、和洋女子大学佐倉セミナーハウスを会場として、2007年8月7日から8日に開催されました。ご多忙の中、遠方にもかかわらず多くの方々にご参加いただき、成功裡に終了することができました。快くご講演をお引き受け下された講師の方々並びにセミナーにご参加下された方々に、実行委員会一同心から厚く御礼申しあげます。

 本セミナーは、21世紀の少子高齢社会に被服衛生学はどのような貢献ができるのか。社会構造や消費構造の変化に伴い、生活者が本当に求めているものが何であるのかを見極めその要求に応えることとし、総合テーマは、「被服衛生学のこれから―戦略と戦術―」としました。そこで、研究の幅を広げるための戦略的研究の必要性を学び、さらに戦術として現実に直面している高齢者、介護、環境、消費者の問題を提示し共に考える場として企画しました(プログラムを後述)。

 講演は、神奈川県産業技術センターにおける組織改革と職員の意識改革・人材育成活動を中心としたマネージメント戦略、高齢者の健康に大きな影響を与える生理・心理特性と温熱環境、21世紀のエイジレス人間、衣生活に関わる在宅看護の現状、環境にやさしい繊維、繊維のクレーム事例など、会員のセミナーへの要望をくんで企画しました。また、事例研究5題の研究発表は若手の研究者を中心に活発な質疑応答がなされました。懇親会前半は、セミナーハウスの食堂で、後半はホワイエでダンスとお話を開催しました。さらに懇親会後に、本セミナーのメインテーマである―研究の幅を広げる戦略を考える―を行いました。元部会長の伊藤紀子先生から被服衛生学分野での約40年間にわたる研究の歩みと若い研究者へ望むことをお話いただき多くの示唆をいただきました。その後、伊藤先生、栃原先生、田口先生、鎌田先生によるディスカッションでは、一貫した研究テーマの重要性、研究経験、高齢者をどう捉えるか、被験者のくくり方、研究テーマとそれに合った研究手法は何であるのか、被服衛生学はどうあるべきか等熱い討論が行われ、もう一度被服衛生学を振り返る時代に来ていることを実感しました。宿泊棟では吹き抜ける涼しい風の中で腰を下ろしての親交、同室になった人達のネットワークを広げる懇親が楽しく行われていました。セミナー閉会後に、国立歴史民俗博物館の解説と見学のオプションツアーを企画し、多くの方が参加して下さいました。

 なお、和洋女子大学のセミナーハウスの講演会場を無料で借用することができ、これにより参加費、懇親会費を抑えることができました。協力を頂いた和洋学園に感謝の意を表します。

 今回のセミナーは、顧問として、家政学会長田村先生、部会長栃原先生、副部会長山崎先生に参画して戴き充実した企画となりました。さらに標記のテーマのもとで、夜の遅い時間帯でのご講演をお引き受け戴きました伊藤紀子先生、関東地区の実行委員の先生方のご尽力によって、部会員相互や若い研究者の方々との活発な交流、関連領域の研究や現場での生の声を聞くことができた絶好の機会となりました。実行委員長としてこの場をお借りして深謝いたします。

報告を終えるにあたり、実行委員会の先生方のお名前(50音順敬称略)を記します。
セミナー実行委員会 委員:岩崎房子、内田幸子、加藤三貴、小柴朋子、斉藤秀子、薩本弥生、
佐藤真理子、嶋根歌子、田口秀子、多屋淑子、呑山委佐子、丸田直美
顧問:(家政学会長)田村照子、(部会長)栃原裕、(副部会長)山崎和彦
(写真)