30号 巻頭言 部会とともに:過去,現在そしてこれから

部会とともに:過去,現在そしてこれから

三野たまき 信州大学教育学部

 1.振り返って 私が被服衛生学部会にお誘いを受けたのは,かれこれ20年前になる.当時,いくつかの学会でお話をさせて頂くようになった駆け出しの頃で,登倉先生からお声を掛けて頂いた記憶がある.それにもかかわらず,恐れ多くもその時本部会に入会しなかったという事実も,実はある(冷や汗).当時の私は共立女子大学家政学部の生物学研究室の助手で,所属研究室の教授であられた上田一夫先生のご方針で,被服学関連の学会のみならず,その他の十数の学会に所属していた.先生のご指導はとてもシンプルかつ明快で,これら学会それぞれに毎年発表し,論文を書くという,今では考えられない荒技を成し遂げていた.加えて当時の私は乳飲み子を2人抱えていたので,常に寝不足との戦いであった.そんなわけで,これ以上は!の思いに,ひたすら後ろ向きな態度を取っていた.そのような私が本部会で初めてお話させて頂いたのは,鎌田先生に講演の依頼をされて参加した,児島で開催された夏季セミナーであった.当時下の子が小学校に入学し,私自身も助手を退職して,上田教授の下での博士課程の院生であったので,岡山まで行って1泊する時間が取れたのだと思う.田村先生と伊藤先生がお食事をしているところにご挨拶に伺ったところ,「やっと出て来たわね」と声を掛けられたことを思い出す(冷や汗).また,本部会に参加した感動は,自分が今まで読んでいた論文を書かれた先生方が,同じフロアーを歩いている!ことであった.長野で開催した某学会に,本学部の学生に応援を依頼したところ,受付名簿を見ながら「先生,あのゼミで読んでいる論文を書かれた先生方がいらっしゃるのですか.紹介して頂けますか」とせがまれた.内心,おまえもかと思いつつ,先生方をご紹介した.その後,彼女らが得意気に後輩に向かって「すごいよ.この論文が歩いているんだから」と,少し文法が間違った会話をしていたことを思い出す.

2.現 在先日とある子育て中の若い先生に,某学会でお会いした.「三野先生はよくあれだけ論文をお書きになられますね」とお褒め(?)のお言葉を頂いた.私は「先生は確かお子様はお二人でしたよね.きっと今とても手がかかりますよね.そして時間もかかりますよね.内もそうだったんです.ところが二人とも大学生になると,子ども達にかけていた時間が余るんですよ.それと仕送りにお金がかかるので,気軽に遊びにも行けないんです.だから論文書くしか楽しみがないんです.先生も直に,論文書きを楽しめるようになりますよ」と答えた.何とも申し訳ない論文書きの理由である.

3.これから本部会委員が持つ知識や経験を世の中にさらに生かし,役立てるための工夫は無いものだろうか.まずは部会として,これだけの知識の宝庫をもっと外に向けて発信する必要がある.そしてもっと積極的に企業とタイアップして,世の中の人々が用いる衣料などを製品化する方法を探る必要がある.恐らく,我々の持てる知識を具現化する方法が,どこかに眠っているのではないかと思う次第である.我々生活者かつ研究者が,世の中に貢献すべき時が今,まさに到来している.
このように他に類を見ない素晴らしいメンバー,若いメンバーがいる部会も,来年は30年の節目を迎える.自分が部会の運営の一端を担い始めた時だからこそ,諸先輩方のご苦労が身にしみ,これまで支えて頂いた感謝に堪えない.今後共に発展するための,若い先生方につなぐ一つの形でありたい.

<連絡先>〒380-8544 長野県長野市西長野6-ロ信州大学教育学部 三野たまき電話・FAX:026-238-4182 eメール: mitusno@shinshu-u.ac.jp

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