29巻 海外レポート イギリス・ラフバラでの海外研修体験記

【海外レポート】
イギリス・ラフバラでの海外研修体験記
~ 子連れ留学奮闘記 ~

薩本弥生

横浜国立大学教育人間科学部

1.はじめに
平成19年度横浜国立大学教員海外研修制度により平成20年3月31日よりイギリスのミッドイングランドにあるレスター州(Leicestershire)のラフバラ大学(Loughborough University)においてHuman Sciences学部の George Havenith教授に師事して客員研究員として7ヶ月間、研修する機会を得た。娘2人(当時13歳と11歳)との子連れ留学となり、短期間で成果を上げられるか、娘達は地元の学校でやっていけるのかなど、心配はあったが、折角の機会を逃さないよう思い切った。
以下、子連れ留学の体験を報告する。


Belvoir Castleにて

2.ラフバラについて
ラフバラの町はレスター州に属し、北はノッティンガムやダービー、南はレスターの大都市に30分~1時間の距離でイギリスの真ん中に位置するが、のどかな自然にあふれた町で子どもと過ごすにはとても良い町だった。自宅から車まで15分くらいの所にBeacon Hillという丘があり巨人の岩があり、360度パノラマで田園風景が楽しめた。



Beacon hillからの風景(上)と巨人の岩(下)

3.日常生活
イギリスでは約13歳までの子供は1人での通学はタブーなので、2人の学校の送迎のために中古車を購入し、朝と放課後、送迎した。
自宅は大学の近くで比較的安全な地域の住宅街の家を借りた。右写真のセミダッチ(二軒長屋の一戸建て)で広くて快適だが、家具無しで家具や家電を購入、物価高と相まって少々割高だった。
イギリス人は街並みが自然とマッチするのを好み、住宅街の建物の外装はどこも古い煉瓦で出来ており、街並みが自然ととけあって風景がとても綺麗だった。ラフバラは天気が変わりやすく朝は晴れでも、夕方には雨のこと<もあり、突然の雨にはしばしば泣かされた。現地の人は少々の雨では傘もささずに平気である。

快適なセミダッチ

4.ラフバラ大学について
ラフバラ大学はスポーツが盛んでオリンピック選手も沢山輩出している。設備が充実していてスポーツを科学的に支える研究も盛んであった。2012年7月27日~8月12日までロンドンで開催される予定の夏季オリンピックでラフバラ大学が日本のオリンピックチームを迎える契約をしたこともあって、現在、ラフバラ大学では少し日本熱が高まりそうな気配だとか。

<健康・快適性に関わる人間科学研究>
人間の健康・快適性に関わる研究の拠点の1つは、私が所属したHuman Science学部であった。
Ergonomics学科では振動、温熱、騒音、視覚等の環境人間工学他、健康と安全、スポーツエルゴノミクス等を研究していた。同じ学部の中にPsychology with Ergonomics学科もあり自動車の運転に関わる人間工学や障害、加齢、睡眠のリズム、食事と運動と健康の関連等が主に自然科学的アプローチで研究されていた。他学部Sports Science学科でも運動中の運動パフォーマンスや生理的変化に関するウェアの寄与等の研究がされていた。

5.Havenith 研究室の紹介
私が所属した研究室は、今年度、教授1名、技官1名、博士課程の大学院生5,6名で、外国からの客員研究者は数ヶ月で1,2名が出入りした。Havenith先生が、研究室長である。先生の研究室と別の棟に実験棟があり、私たち研究室のメンバーは実験棟で過ごしていた。


歩行模擬サーマルマネキン

Havenith先生はhuman Science学部の中の人間工学コース所属で振動、人の温熱生理、被服物理、極端な環境下での人の生理反応等に関して研究されている。衣服の熱水分移動等の研究には写真に示す歩行模擬サーマルマネキンが使われていた。
滞在中には大学院博士課程修了間近の学生が運動時の発汗の部位差、男女差等に関しての研究をしていた。その他、温冷感の部位差の研究をする学生もいた。研究室では棟が離れていることもあり、本筋の相談は教授と行うが、実験装置や日々の細かい相談は技官が応じてくれ、仕事の種類により分業していた。技官や助手などがいないため、何でも一人で行い、会議や事務作業の合間に研究をこなす私の日本での研究環境からすると、うらやましい環境だった。博士コースの学生はもう一人前の研究者で修士の授業も一部担当し後輩の相談にも応じて私も、お世話になった。
次頁の写真は日本に戻る前日にお別れのランチ会をアレンジしてくれた際の写真である。

6.私の留学中の研究の紹介
私が研究したテーマは着衣のふいご作用による換気についてである。ふいご作用による換気は、人体からの熱水分移動性を促進させるため、蒸れやすい着衣の温熱快適性向上に重要である。

お別れランチ会

本研究では、トレーサガス法を用いて着衣の換気量の分布を評価する方法を確立し、これを用いて温熱的に快適な着衣のデザインを検討する評価法を構築することを目指し定常法の計測法を学び、着衣の局所の計測に応用する方法について検討した。留学前には過渡法で研究していたが(薩本ら,2008)、比較したところ、再現性の面で定常法の方が優れていた。
この研究は学術的な研究の成果が着衣の商品開発にも応用できる可能性が高く、実用に耐えうる評価法になると思われ、産業界への貢献も期待され、その意味からも意義があると考えている。

7.最後に
小さな失敗は数限りなくあるが得難い経験だった。子連れのために時間は割かれることも多か

ったがその分、地域の生活に入っていくことができ、現地の様子がより良く分かった部分もあると
思う。何といっても、いろいろなことを一緒に乗り切ったことで精神的に親子のきずなが深まる貴重な機会だったと思う。
職場、家庭の諸事情で留学に踏み切れない方が多いと思うが、是非、機会を見つけて挑戦してみて欲しい。これから留学経験をする方の参考になれば、幸いである。

8.文献

Satsumoto, Y., Takeuchi, M., Habu, C., Yoshizaki, A., Imamura,Y., Wada, M., Akaki, K. and Miyazawa, K.2008, Development of Device to evaluate the ventilation of diaper”, Proceedings of Korea-Japan Joint Symposium on Human-Environment System, HES32 in Cheju, Korea, November.

<連絡先>
著者名 :薩本 弥生
住所:〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-2
所属:横浜国立大学 教育人間科学部
電話・FAX: 045-339-3307
E-mailアドレス:satumoto@ynu.ac.jp

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