(一社)日本家政学会被服衛生学部会

28巻 著書紹介

【著書紹介】

人工環境デザインハンドブック

丸善株式会社(2007年刊)462頁

九州大学大学院芸術工学研究院・栃原 裕

人類は過酷な自然環境を科学技術の力で克服し、徐々に生存範囲を拡大し、さらにはより快適な環境をつくり出すまでになっている。この高度に発達した科学技術によりつくり出された人工環境は、生活環境の各種要因、例えば光環境、映像環境、音環境、温熱環境等を自在に操り、人々が快適に生活する場を提供してきた。しかし、技術によりつくり出された人工環境は、往々にして利便性や経済性の追及に主眼がおかれ、人間本来の生理的・心理的感覚特性を踏まえたデザインがなされず、例えば、夜間の高照度人工照明が人間の生体リズムを乱し、映像、音響の乱用が神経障害、聴取妨害等を引き起こしたりする等、様々な負の効果をもたらしていることも否定できない。

諸技術を人間にとって真に望ましいものとすること、すなわち「技術の人間化」を目的として昭和43年に設立された九州芸術工科大学(現:九州大学芸術工学研究院)は、開学以来、この研究教育理念を踏まえて環境生理学、知覚心理学に関する基礎研究の実績を上げるとともに、その成果を人工環境のデザインに結びつけるような実践的研究においても多くの成果をあげて来た。さらに、平成15年度には、文部科学省の21世紀COEプログラムにおいて、「感覚特性に基づく人工環境デザイン研究拠点(拠点リ-ダ-:栃原裕)」が採択された。本拠点は、「技術の人間化」の理念に基づき、人間の生理的・心理的感覚特性に基づいて真に人間のためとなる人工環境をデザインするための研究教育の拠点形成を目指すものである。「環境生理学」、「知覚心理学」、「感性デザイン」の三つの部門が連携して、視覚、聴覚、嗅覚、温熱感覚および体性感覚の知覚心理学や、これらの環境にかかわる環境生理学の最新知見に基づき、照明、映像、音響、空調、建築物等の人工環境の設計条件を明らかにして来た。そこでは、単一要因だけでなく、複合環境の総合的評価を行ない、最先端の設計技術を駆使し、照明、映像、音響、空調、建築物等に関する、具体的な人工環境整備のデザイン指針提案を行うことを目的とした。

このハンドブックは、本COEプログラムの事業推進担当者だけではなく、九州大学さらには学外の研究者にも執筆をお願いした。第一線研究者の研究成果に基づき、人工環境の各種環境因子、複合環境および実環境について「生理的評価」、「心理的評価」、「デザイン展開」および「基準値・標準値」を記載し、幼児、高齢者、障がい者にも配慮した人工環境のデザイン指針を提示したものである。人工環境に係わる研究者・技術者さらには人工環境を設計する現場デザイナ-の方々にお役に立てば幸いである。

以下に章の構成を記す。

1章:人工環境の創造、2章:温熱環境、3章:空気環境、4章:音環境、5章:光環境、

6章:色彩環境、7章:映像環境、8章:実環境

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