28巻 海外レポート

【海外レポート】

第12 回国際環境人間工学会における日本人研究者の活躍

福岡女子大学人間環境学部・深沢 太香子

心身ともに健康で快適な状態の維持に,衣服の視点から貢献することを目的とした研究が,被服衛生学部会では盛んに行われています.その研究成果を発表する関連の学会の一つに,国際環境人間工学会(International Society of Environmental Ergonomics)があります.この学会では,2 年に一度,国際会議を開催しています.第12 回目となる大会が2007 年 8 月19 日から24 日に,アドリア海に面した港町ピラン(スロベニア)にて行われました(写真1).幸いにも,私は,その大会に参加するチャンスに恵まれました.そこでは多くの日本人研究者の活躍を目の当たりにすることができましたので,その国際会議における様子について,私の感想を交えて,報告させていただきます.

第12 回国際環境人間工学会は,ヒトと周囲環境との相互関係を中心とした,以下の6 つのシンポジウムより構成されていました.

Symposium 1: Aerospace & Diving Physiology
Symposium 2: Clothing & Textile Science(防護服を含む)
Symposium 3: Temperature Regulation(着衣の温熱的快適性を含む)
Symposium 4: Manikins & Modelling
Symposium 5: Working Environment & Employment Standards
Symposium 6: Milestones in Environmental Ergonomics

一日あたり1 シンポジウムを行う程度のペースで行われ,6 日間で,招待講演が12 演題,一般発表として211 演題もの研究成果が報告されました.日本からは,近藤徳彦先生(神戸大学)の招待講演が1件,口頭発表8 件,12 件のポスター発表がありました.日本人による研究成果は,全発表中の約10%も占めていたことから,日本の環境人間工学における寄与は大きいという事がわかります.

発表件数という数字からだけでなく,研究および発表内容の質という点からも,日本は環境人間工学の発展に多大な貢献を果たす存在になってきているとも感じました.私がそのように感じた理由は,単に日本からの発表数が多いからのみではなく,”英科学論文は書けるけれど,英語での議論ができない日本人”というイメージを低減する質疑応答が行われたからです.私が,初めてこの国際会議に参加した頃には,日本人研究者に対する質問は,学術的というよりはむしろ日本人の答えやすさに配慮しているという印象がありました.しかし,日本人研究者の英語による議論のスキルは,教員学生を問わず年々向上しており,英語による質問内容を理解して,短い言葉ながらも的確にロジカルに答えられるようになってきています.それにともない,質疑応答では,研究内容を深く掘り下げる質問が多くなってきています.そのことから,日本人研究者は切磋琢磨する存在に変化していていると感じています.

環境人間工学における日本の貢献が,高くなってきていることを実感したもう一つの理由があります.この国際会議には,27 カ国から200 名の方が参加されました.そのなかで,国際会議にて特に重要な役割を果たされた日本人研究者が5 名もおられたことです.近藤先生の招待講演をはじめ,口頭発表の座長を3 名の日本人研究者が務められました.そして,シンポジウム6 では栃原裕先生(九州大学)が温熱環境生理分野からのシンポジストとして,R. Goldman 先生やI. Holmér 先生など,高名な海外の研究者と肩を並べ,”これからの環境人間工学”について発言をされました(写真2).

また,シンポジウム6 中では,フロアにいた日本人研究者も大変貴重な提案をされました.その提案とは,これからはintegrated environmental ergonomics を考えていくべきではないかというものでした.各専門分野の視点から人間工学について述べるではなく,横の領域と手を組んで,人間工学を全体としてとらえていこうという提案に,多くの参加者が賛同しました.そのとき,私は,大切な事を認識しました.それは,自分の意見を述べること,そして,日本語アクセントの英語を臆する必要は全くないということです.シングイッシュ(シンガポール英語)のように,私達の活躍次第で日本語アクセントの英語は,近い将来きっと市民権を得られると思います.

この国際会議での日本人研究者の活躍は,私の研究活動において大きな励みと目標となりました.次回の国際環境人間工学会は,ボストン(米国)にて,2009 年8 月2 日から7 日に開催される予定です.
研究活動と同時に英語のスキルも向上させて,被服衛生学と環境人間工学の双方に貢献できるよう努めたいと思っています.

 

インフォメーション
国際環境人間工学会 International Society of Environmental Ergonomics
ホームページ http://www.environmental-ergonomics.org/

 

謝辞
第12 回国際環境人間工学会(開催地 ピラン,スロベニア)には,日本学術振興会 平成19 年度 国際学会等派遣事業の支援を受けて参加しました.

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