28巻 巻頭言-老人性立腹症

【巻頭言】

老人性立腹症

実践女子大学 山崎和彦

本誌の巻頭に掲げていただくとなれば、省資源や地球環境保全の重要性が叫ばれる今日、被服衛生学の意義が益々高まっている、クールビズしかりウォームビズしかり、時代は我々と共にある、といった論調で構成するのがよいのだろう。しかし中国の欲望に火がついてしまった。もう何をやっても無駄である。出来る範囲で節約に努めて家計を浮かし自己満足に浸るのみ。省資源については以上が我が結論である。しかしまだスペースがある。そこで、この頃の我が心情について綴ることとする。

つまらん。ともかくつまらん。色々な事が気に入らぬ。初老性立腹症であったものが真性老人性立腹症に移行しつつあるようだ。そのくせ事あるごとにやたらおかしい。老人性躁症も併発しているらしい。

葬式に行けば笑いをこらえ続けてヘトヘトになる。葬儀屋のセリフや仕草はどうみても喜劇である。もったい付けた「らい~はい!」はやめてもらえないものか。どこで覚えたのかビブラートをたっぷり効かせて読経する坊さんがいる。同類がいて肩をヒクヒクさせていようものなら、もうたまらない。私は爆発するだろう。

怒りには他者に向くものと自分に向くものとがある。自分に対し甘いのも老人の特徴である。私は夕刻に駆け足をする。しまったしまったしまくらちよこ、と呪文を唱えつつ走れば、後悔の念などさっぱり消える。

落涙をこらえるのも難しくなってきた。特に合唱コンクールがいけない。まとまりのない服を着た子供らが登場し、歌い始めた途端に喉の奥が詰まる。下手ではあるがそこそこ和音が響くとき、泣けて泣けて仕様がない。

恐らく、情緒の制御に関わるリミッターは高齢になるほど緩くなり、喜怒哀楽のスイッチも容易に切り替わるのであろう。つまり枯木のごとき老人でも、彼の脳内では嵐が吹き荒れているということがあり得る。私が突如ワッハッハッハと笑い出したり、涙を流し始めたりしたら、まあそういうことです。

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