26巻 海外レポート-2

【海外レポート】

 

吉林工程技術師範学院(中国吉林省)への訪問

 

福岡教育大学 長山芳子

 

 中国からの大学院留学生が当研究室に所属しており、日本の商業クリーニングについて研究に励んでいる。院生と話しをする過程で、訪中することにした。被服衛生学とは接点が少ないが、6月下旬に大学訪問した様子を紹介させていただきます。

 

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当初の訪中目的は、日常生活を見たりクリーニング関連資料を収集したりするためであった。準備過程で、院生の出身である吉林工程技術師範学院の施設や授業を見学させて頂くことになり、さらに筆者が同大学で講演することに発展した。 その大学は、中国東北部に位置する吉林省長春市(州都・人口718 万人)に所在する。芸術学部、情報工学部、経営学部、機械電子工学部、生物・食品学部があり、教員数260人・学生数6000人、うち芸術学部在学生は約1000人の規模である。

 ここで私の戸惑いを紹介しよう。まずは訪問の連絡方法である。訪問先の呂波芸術学部長は院生の恩師ということもあり、院生が全て仲介をしてくれた。これは有り難いことなのだが、こちらから訪問依頼文書を出していないし、先方から講演依頼文書もない。講演題目や私の連絡先などを記載した画像ファイルを院生にメールし、翻訳した文章を添えて呂波先生に送るように頼んでいたが、直接連絡をとりあっていないことに不安を憶えた。訪中2日前に呂波先生宛に訪問日時を確認する国際FAXを送信して、初めて訪問と講演を歓迎する旨のFAX(中国語)を直接受信したのである。

 

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次に講演対象者についての情報不足である。講演テーマは筆者に任されていたので、中等職業技術教育が特色の大学であることや、アパレル関連科目は多いが被服管理学や環境教育科目は無いらしいことから、生活者の視点に立った被服教育を提案することにした(題名は後述)。

 訪問初日の午前中、見学させていただいた展示室には、学生の各種受賞作品や教員の参考作品など、多くの服装デザインパネルと製作品が並んでいた。さらに、空間デザイン、パッケージデザイン、ポスターなど広範囲の作品も展示されていた。芸術学部には建築物・居住空間デザイン、商業デザインなどの専攻もあることを事前に確認すべきであった。

 

 講演題目は「生活者の視点に立った被服教育の提案-日本における教員養成の立場から-」、約60分の内容構成は、Ⅰ.緒言と自己紹介 Ⅱ.被服教育の位置づけ:1.学校教育・家庭教育・社会教育、2.衣生活の知識と技術と感性の統合、3.何故、被服を着用するの? 4.何故、洗濯するの? Ⅲ.今後の被服教育への提案:1.生活から見つめ直す環境保全(改善・維持・向上)、2.被服教材開発、3.情報の収集・提供方法の検討として、図と漢字多用のパワーポイントを準備していた。

 

 昼食会後まもなく講演会である。学生は講演30分前から入場し始め、300人近くになっていた。

受講者は服飾デザイン専攻とは限らないというは推測できたが、彼らは産業にかかわる可能性が高いし、消費者という一面ももつ。

いずれの立場においても、人体の健康や安全、そして環境に配慮したいという提案(Fig.1、講演スライドに加筆)に重点をおいて話すことにした。


まとめでは、人体や環境に安全な物を使用すること、そして生活から見つめ直す環境保全として、ひとりひとりが生活者の視点から環境配慮型・循環型生活への改善・維持・向上の努力が必要であると提案した。これは被服教育だけで他分野にも共通すると話したが、意図が伝わったであろうか。

 

 筆者に次いで院生が「日本福岡県での留学について」約30分間話して、講演会は終了した。

 

 芸術学部の先生方との交流では、日本の家庭科教科書や福教大大学院の紹介、色彩について筆談まじりの懇談をした。翌日は吉林工程技術師範学院の提携工場を見学させていただいた。長春市内から約1時間の郊外にある制服工場で、日本製の機械を一部導入して警察や裁判所の制服を縫製していた。部署や季節ごとにディスプレイされたマネキンも整然と並んでいた。スーツやネクタイなど自社ブランドも展開していくらしい。

 

 出張に関して、充電器が100~240Vに対応したノートパソコンとデジカメは、変圧器なしで使うことができた。コピー・FAX・プリントアウトサービスを扱うビジネスセンター、インターネット設備があるホテルも便利であった。空港関連では、ターミナルの節電が徹底しているように感じた。乗り換え時の長時間待ちでは荷物預かりを兼ねて大連空港内ホテルを借用したがドアの鍵が壊れたり、長春空港では出発予定時間より4時間以上待たされて弁当が提供されたりという経験もした。

 

 日程は本務との兼ね合いで6日に短縮せざるを得なかったが、充実した出張であった。呂波芸術学部長はじめ吉林工程技術師範学院の先生方、そして院生と彼の友人方には大変お世話になりました。
この場をかりてお礼を申し上げます。

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