(一社)日本家政学会被服衛生学部会

26巻 大学院生の声

学びの門

 

文化女子大学大学院 生活環境研究科被服環境学専攻博士後期課程
被服衛生学研究室 山田 巧

 

 「服はね、ただポンとあるわけではなくて、必ず人間が着用するもので…」。2003年1月、衣服について勉強したいといった私に対して、田村先生が被服衛生学について説明してくださった時の事である。ニコニコしながら楽しそうに話す先生とは対照的に、私は初めて聞く衣服を取巻く現象の複雑さに衝撃を受けていた。しかし、遊んでばかりの学生時代を送ったそれまでの自分にとって、学問に対してそれほど楽しみや魅力を感じることは未知の経験だった。他大学で経済学部に身を置き、衛生学は勿論、衣服に関しても全く無知であった私は、こうして無謀にも、全く違うジャンルへ進学することを決めたのだった。

 

 衣服を仕事の対象として考え始めたのは大学時代の就職活動のときである。当時は海外ラグジュアリーブランドブームで海外からのブランドが都内の要所を占め、一方国内アパレル産業は低価格路線を走り、生産拠点を国内からより低コストとなる海外へシフトする、「産業の空洞化」が著しいときであった。ファッション大国などと謳われているそんな国内産業の流れに矛盾を感じながらも、衣服そのもの知識がなかった私は次第に、「どうやったら…」のようなHowよりも前に、「なんだ?」という根本的なWhatから知る必要があると思い始めたのだ。また、布や衣服は日々必ず消費されるものであったり、ブランドに化けたりと、その価値に多くの「トリック」が生まれる商品である。そうした商品について好奇心を抱いたのがきっかけであった。

 

 そこで就職するよりも先に、衣服について一から学んでみたいと思い、独学を考えていた中で出会ったのが被服衛生学であった。始めは女子大学という環境の変化や、予備知識すらない、徒手空拳で臨む怖さがあったが、昔お世話になった方の「本当に強い人材ってのはね、ただある特定の環境だけでものすごい力を発揮する人じゃなくて、どんな環境下でも力を発揮できる人なんだよ。」という言葉を思い出し、自らに檄をとばし、修士2年間を乗り切ることができた。全く違う環境へ飛び込み、大学院生活を送ることで知識のみならず、人間力のようなものも鍛えられている気がする。未経験の環境に適応してゆく力も又、自分の大きな財産になりそうである。

現在、博士後期課程2年に在籍しているが、学会での発表や研究の推進など、充実した生活を送る事ができるのも指導教授田村照子先生、研究室の諸先生方、そして学部から修士・博士課程を含む仲間のお陰だと、改めて感謝している。今後は、自分の研究活動が、微力ながらも国内の産業活性化に、そして長い伝統の中で培われてきた日本の衣文化の発展に貢献できるよう、頑張ってゆきたい。

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