25巻 巻頭言-被服衛生学の必要性

【巻頭言】

 

被服衛生学の必要性

 

部会長 栃原 裕(九州大学大学院芸術工学研究院)

 

1984年3月に箱根で開催された第3回の被服衛生学部会セミナ-「clo値を考える」に、出席したのが私の被服衛生学部会との出会いであった。当時は、昭和大学医学部衛生学教室の吉田敬一教授の助手であった。吉田先生の影響もあり、その頃から被服衛生学には興味を持っていたので、セミナ-が大変興味深かったことを覚えている。その後のセミナ-には、数回を除き参加させて頂いた。特に記憶に残っているのが、横浜で開催された第8回セミナ-「衣服内の熱・水分移動を考える」である。吉田先生のお手伝いで、セミナ-の運営にあたった。横浜の港に近い場所で開催されたこともあってか、幸いセミナ-は好評であった。福岡で開催された第23回セミナ-の折に、突然、部会長の就任を依頼された。何度も固辞したが、もうそんな年齢だからと言われ、年だけは充分に重ねてきたことは事実なので、お引き受けすることになった。

 

被服衛生学のなかでも、私は「防護服」に関する研究に興味を持っている。吉田先生が代表者を務められた、文部省の科学研究費総合研究A「密閉型防護服の総合的研究」班に参加させて頂いた以来である。その後、アスベスト防護服や冷蔵倉庫防寒服着用時の生理的負担の調査や実験などを行ってきた。数年前からは、消防研究所との共同研究「消防用防護服性能評価手法委員会」に参加し、また「次世代防火服の開発」にも関与している。国際標準化機構(ISO)のなかでも、防護服を取り扱っている規格は多い(ISO/TC94(個人用安全-保護衣及び保護具)/SC13(防護服)など)。TC159(人間工学)/SC5(環境人間工学)/WG1(温熱環境)でも、clo値に関する規格「ISO 9920:温熱環境の人間工学-着衣の断熱性と透湿抵抗の評価」など、被服の熱特性に関わる問題が多く取り上げられている。最近では、「9月11日」以降の化学テロや、SARSや鳥インフルエンザ対策のために、「密閉型防護服」が使用される機会が多くなっているため、国立感染症研究所と「バイオハザ-ド防護服」着用時の被服衛生学的研究に取り組み始めている。もちろん、「防護服」だけではなく、先の公開講座にもあったように、「衣服と健康」に関わる研究に対する社会の関心は高い。

 

被服関連学科の減少傾向は認めざるを得ないが、被服衛生学に対する社会からの期待は、現在も、非常に大きい。幸い、山崎和彦副部会長をはじめ、優秀な先生方が部会運営に参加していただくこととなった。平田耕造前部会長の後任として、被服衛生学研究の推進のために部会長の任期をまっとうしたい。

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