23巻 海外レポート

【23巻 海外レポート】

香港生活雑感

 

香港理工大学繊維及び製衣学系 登倉 尋實

2002年3月に奈良女子大学を定年で退職し、6月からポーランドのノファー産業医学研究所の労働生理・人間工学講座で働いていたが、被服生理学の研究の確立を要請され、2003年10月から香港で働いている。香港理工大学は学生数は22,000人で、敷地は93,500平方メートルである。香港の工業、商業、経済の活動に人材を提供し支えているという自負を持っている。6学部で構成され29の学科がある。その学部はFaculty of Applied Science and Textiles, Faculty of Business and Information Science, Faculty of Communication, Faculty of Construction and Land Use, Faculty of Engineering, Faculty of Health & Social Scienceからなっている。Faculty of Applied Science and TextilesはDepartment of Applied Biology and Chemical Technology, Department of Applied Mathematics, Department of Applied Physics, Institute of Textiles and Clothing (ITC)から構成されている。この大学全体の詳細を知りたい方はどうかhttp:www.polyu.edu.hkを尋ねて欲しい。ITCの教員は81名という大所帯である。分野はファション関係者が多い。日本との大きな違いは各研究分野が最期は衣服・ファションに統合されるという思想が確立されている。ITCの主任はNewton教授でファションを専門としている。私の理解では日本は各分野が分かれており、最期の着るものに統合されていない様に思う。ここが香港との大きな違いである。今、私達は本の出版を準備中であるが、題名は「BIOFASHION-HEALTHY LIFESTYLE FASHION」である。内容は被服生理学とファションを結び付けようとしている。編著者は私、Newton教授、Li博士である。Li博士の専門は被服材料学で、熱・水分の移動の分野での権威であるが、人と衣服の関連をBIOFASHIONというかたちで連結しようとしている。英国の出版社が大きな興味を持ってくれ話が進んでいる。奈良時代の私の研究室で学位を取得した方、共同研究者が主な執筆者である。

ここでの研究のことを少し述べたい。私は奈良時代に衣服による圧迫が生理機能を抑制する事を見出し発表してきた。唾液分泌量、消化機能、食べ物を口に入れて排泄するまでの時間、発汗量、随意反応時間、月経周期の長さ等は衣服による皮膚圧迫により、機能は抑制され、また撹乱される。しかし、森ら(2002)の最近の知見によると(Int J Biometeorol 47:1- 5, 2002)、昼間間歇的な刺激が皮膚に与えられると、刺激がない場合に比べ、夜間のメラトニンホルモンの分泌量が有意に増加する。この事実に触発され、昼間、衣服による皮膚圧迫が間歇的な場合、圧迫が殆どない場合、絶えず一定の圧迫がある場合の間で、夕食に対する消化吸収が異なるかもしれないという予測で実験を準備中である。意味ある皮膚圧迫が存在するかもわからないと思っている。体を動かす時には皮膚を圧迫し、安静時には圧迫が起こらないのである。しかし、そうこうするうちに、SARSの問題が発生し、医療従事者を中心に多くの方が、ウイルスに感染し命を落とされた。完全防備の防護服を着用していても感染が起こるのである。防護服になにか問題があるのではなかろうかと思いLi博士、Newton教授らとともに防護服の研究に現在取り組んでいる。私の今の最大の興味は、防護服を着用すると、相当な熱ストレスを受ける。このストレスが体の免疫系を弱体化させ、感染を容易にしたかも知れないと考えている。実験的に確認できないかと考えている。熱ストレスのすくない防護服をデザインするかが求められる。私のここでの滞在期間は今年の10月下旬までである。その後は、ポーランドのInstitute of Natural Fibres(天然繊維研究所)で被服生理学の研究を続ける。しかし、何ヶ月かは香港でも仕事を継続する。

香港理工大学のITCは素晴らしい研究環境である。是非、PhDの学生としてここに勉強にきてほしい。しかし、英語は聞け、話せ、書けることがどうしても必要である。香港の学生は英語は全員自由に話せ、聞け、書ける。残念ながら日本人よりはるかに上手い。ゼミも英語で議論する。日本語を判る人はいない。TOEFLがある得点以上が前提条件である。外国人のための奨学金制度もあり、経済的に問題なく生活できる。香港は国際都市で生活を楽しめるはずである。日本の若い学徒の挑戦を期待している。英語が自由に駆使できたら、今後の研究生活にも必ずやプラスになろう。しかし、それ以上に大事な事は自分の専門分野で実力をつけることが大前提であることを忘れてはいけない。それを表現できる英語の力をつけることである。

最期に香港の生活の一端を紹介したい。私達家族は沙田というところのアパートに住んでいる。中国始発の電車で大学まで20分かかる。ちかくに日本の西友があり、日本の食料品は何でも売っている。中国系のスーパーマッケトのParkn shop, Wellcomeもあり豊な食材に溢れている。日本の回転寿司が大人気で順番待ちの長蛇の行列ができる。沙田だけでも日本料理店は3~4軒もあり、どこも満員だ。香港人は日本の味が好きなのであろう。さらに、中国市場もあり、海・川からの生きた魚介類、生きた鶏、生きた蛙、様々な新鮮な野菜、牛肉、豚肉、鶏肉を売っており活気に溢れている。香港人は殆どの人が英語を話す。香港は安く生活しようと思えば、相当安く生活できる。安いものから高いものまで揃っているからである。昼、大学の食堂で、300円もだせば満足できる食事ができる。男女の愛情表現は大胆で電車や大学構内のなかで抱擁しているカップルを多く観察できる。中年以上でも男女は手をつないで歩いている。道路で接吻しているカップルはみたことがない。やはり愛情表現ではヨーロッパとはまだ違いがある。しかし、香港は日本よりヨーロッパに近いように思える。他人の生活には干渉しないし、自由に生活を楽しめる。女性の社会的地位は相当なものである。日本より香港の方が女性にとっては活躍の場は広がっているようにみえる。

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