23巻 巻頭言-被服衛生学における形式知と暗黙知

部会長 平田 耕造

衣服と健康の科学に関する教育・研究を推進する被服衛生学部会活動への社会的関心は高く、部会にとっては追い風です。伊藤先生のリードの下、文部科学省の科研費基盤研究B「異なる季節・地域におけるユニバーサル・ファッション提案のための被服衛生学的研究」が採択され、多くの部会員の協力で今年度も進行中です。さらに部会の研究成果を社会に還元するために、中橋美智子先生、登倉先生のご努力により第1回目の公開講座(科研費研究成果公開促進費補助)を東京で開催して以来、第2回大阪、第3回名古屋で部会の公開講座「衣服と健康の科学、最前線」を開催してきました。これらの成果を集めて、衣服と健康の科学に関する知識を一般の人にも分かりやすく解説する本「衣服と健康の科学」を、本年2月に丸善(株)から刊行しました。これと連動させて第4回目の公開講座を本年3月に神戸で開催しました。出版されたばかりの「衣服と健康の科学」をテキストに使用する手弁当での講座でした。参加者には高校家庭科の先生方が多く、ポスター発表の会場では熱心に質問されていたのが印象的でした。矢継早の質問に対しても、発表者が丁寧に答えていただいたことが好評の一因であったことは、後のアンケートから分かりました。部会に対する中高家庭科の先生方の熱い期待が感じられ、今後どのようにお応えできるかが検討課題の一つであると思います。

被服衛生学セミナーは、1982年に富士教育研修所(静岡)で第1回目が開催されたのを皮切りに毎年開催され、すでに21回を重ねています。総合テーマに目をやると、衣服気候に始まって衣服圧、寝床内気候、clo値、高齢者、皮膚感覚、温熱生理、心地よさ、アジア、電磁波など多岐にわたり、部会の守備範囲の広さと社会的要請の変化を物語っています。昨夏の長野では被服心理学部会と合同開催に発展し、多くの講演や研究発表、シンポジウムなど部会単独の開催では得られない幅の広さがあり、大きな成果をあげました。若手研究者による研究発表の充実ぶりは特筆すべきであり、部会活動の将来を担う世代が着実に育っていることを実感させてくれました。林委員長はじめ、関係の先生方のご努力に厚く感謝申し上げます。

第22回の被服衛生学セミナーは山崎委員長の下で、第3回被服学合同セミナーと連動して開催されます。文字化、数値化できる情報、すなわち形式知は、インターネットの普及により人同士が直接会わなくても入手可能となりました。しかし、現代でも未だ形式化が不可能な知、すなわち暗黙知が存在します。新しい暗黙知は、異質な人材との接触、摩擦によって創造されます。部会セミナーは世代、地域、考え方の違いなどを越えた異質な人同士が接触する場所であり、まさに新しい暗黙知創造の場となることでしょう。今夏、どのような暗黙知が創造されるか大いに期待されます。

部会は今春から新役員でスタートしました。被服衛生学部会の活動がますます活性化し発展しますよう、新しい役員の先生方はじめ会員各位のご協力を心からお願い申し上げます。本年も編集担当の皆様のご努力により部会報第23号ができました。暗黙知を育む形式知として大いにご活用ください。

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