22巻 特集-賛助会員の声2

【22巻,賛助会員の声】

 

下着メーカーの立場から

 

グンゼ㈱アパレル事業本部開発課 快適工房 御手洗 幸子

 

皆さんは下着を身に着けるとき、何を考えて選んでいるでしょうか。「ワイヤーブラでバストアップ」、「寒いからババシャツにしよう」など、下着の基本機能で選ぶのはもちろんですが、それだけではないことでしょう。実際には、「今日は白い服だから透けにくいモカ色にしよう」、「肩を出す服だからストラップがはずせるブラだな」、「暑いなぁ。商談前に汗かくだろうから、今日は消臭インナーを着よう・・・」。こんな風に、必ず生活シーンも考えて下着を選んでいることと思います。そう、今や下着は「暑さ寒さを防ぐ」、「洗濯に強い」といった基本機能にとどまらず、私たちの生活全般をコーディネートするアイテムの一つになってきたようです。

 

被服衛生学とは、衣服を身につける”人”にとって、いかに快適に過ごせる環境を作り出せるかを研究する学問といえるでしょうか。それならば、我々下着メーカーにとって、被服衛生学の視点を欠くことはできません。素材の物性、衣服内の環境、人体そのものの変化・・・、これら総合的な考察が常に求められます。しかし、その考察する基準が少しずつ変化してきているように思います。先にも述べたように、単に暖かい、涼しいというだけでなく、その衣服を着用するターゲットの背景と、使用する生活シーンに最適かどうか、という視点が必要になってきたのです。つまり、今や下着もTPOに合わせて着替える時代になったのです。

 

実際、我々メーカーでは、今まで以上にターゲットと生活シーンを明確にして商品開発を行うようになりました。例えば、グンゼが02年発売したメンズアンダーウェア『YG-X』(写真1)。メンズ = 綿100%の既成概念を打ち破った新機能アンダーウェアです。

ターゲットは20~30代のアクティブなビジネスマン。現代、特に都市部では空調設備が普及し、省エネ対策として冷房28℃、暖房20℃が推奨されていますが、実際はそれよりも強い設定をしているのが現状です。その結果、夏はゾクッと冷え、冬に小汗をかく、といった環境にさらされ、室内・室外の行き来を繰り返すことによる温度ギャップが、体調不良を引き起こす一因にもなっています。Yシャツ、ネクタイがはずせないビジネスマンにとって、汗やムレの処理は1年中必要な機能となっているのです。
そこで我々は、綿に機能複合糸アクティコット(キュプラとW断面ポリエステルの特殊複合糸)を最適ブレンドすることよって、ソフトな着心地と、優れた吸放質性と吸水拡散性を発揮するアンダーウェア『YG-X』を作り出しました。スポーツ用のアンダーウェアとは異なり、ビジネスマンの日常においては、流れる汗だけでなく、ムッとした湿度の処理にも優れていることが必要です。『YG-X』は、この吸水性と吸放湿性の両立を高レベルで実現した、新発想のアンダーウェアなのです。このように、ターゲットとその生活背景を分析することにより、求められる機能が顕在化し、今までありそうでなかった商品の開発につながっています。男性か女性か、若年層か壮年層か、ネクタイをするか、しないか・・・。生活シーンに合わせた商品開発の考え方が、今、求められているといえるでしょう。実際、このような手順で開発した商品を手にした消費者の反応は高く、機能を実感した、という声を数多く頂いています。

 

また、快適をうたう商品が氾濫している現代、消費者は信頼できる判断基準を求めています。以前は”不快を減らす”ことが快適と言われていたのに対し、現在はスキンケアや消臭など、”下着から積極的に何らかの価値を得よう”という動きが主流になってきました。その結果、店頭には様々な付加価値商品が並ぶようになりました。しかし、どれを選んでいいのか、消費者が店頭で悩む姿も数多く目撃されるようになっています。SEKマーク、遠赤マーク、消臭マークなどは認定機関によるガイドラインが設けられていますが、まだまだ市場的には不十分です。新しい加工法ができたから、新しい素材を使ったから”快適だろう”ではなく、消費者の信頼のためにシビアな評価基準が必要とされているのです。

 

健康番組のブーム、定着によって、今や消費者の体・衣食住に対する知識欲はとても高いものがあります。将来何に応用するための研究なのか、それを使うと人はどうなるのか、そういった具体的な情報を求める消費者が増えています。これら消費者の身近な疑問に、データを持って答えていくことが、我々、被服衛生学に携わるものの使命、とはいえないでしょうか。

 

研究内容を伝える場も確実に増えてきました。公開講座や勉強会には数多くの熱心な消費者が集まります。インターネットを使った情報公開も有効でしょう。今だからこそ可能になったあらゆる手法を用いて、消費者への知識還元を行って欲しいと思います。

 

被服衛生学の研究テーマは、我々の生活に密着するものばかりです。だからこそ、これらのテーマを科学的に検証した成果は、強いインパクトを持って人々に浸透していきます。被服衛生学だからこそできる「そうだったのか!」という新鮮な驚きは、きっとまだまだ数多く隠れていることでしょう。”人”を中心として衣服を研究し、日常生活へと還元していく活動が、今まで以上に活発化していくことを期待しています。

関連記事

  1. 第33号 講評

  2. 第31号 海外レポート

  3. 第33号 表紙

  4. 第23回 日本家政学会被服衛生学部会 夏季セミナーのご報告とプログラム…

  5. 第34号 「研究室紹介」(伊藤先生)

  6. 22巻 大学院生の声-2

  7. (社)日本家政学会被服衛生学部会 第30回被服衛生学セミナーのご案内(…

  8. 24巻 海外レポート

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。