22巻 巻頭言-「衣服と健康の科学、最前線」を走る被服衛生学部会

副部会長 平田 耕造

被服衛生学部会の目的は、会則第2条によると「日本家政学会の部会として、被服衛生学領域の研究・教育を推進し、併せて家政学の発展に寄与すること」です。これはさまざまな環境で着用する衣服とヒトの健康について科学的に解明し、健康で快適な衣生活を提案することと言いかえることができます。諸先生方が築いてこられた研究成果を広く社会に還元するため、本部会では平成8年度には東京で「衣服と人間の健康」と題して、平成10年度には大阪で「衣服と健康の科学、最前線」、さらに平成12年度には名古屋で「衣服と健康の科学、最前線 ─あなたの健康を守る衣服─」と題して公開講座を開催してきました。回を重ねる毎に参加者が増え、被服衛生学部会活動に対する社会の需要・期待の大きさを感じないではおれません。

一方で、家政学会の被服分野には8つもの部会が設立されており、細分化の進行に伴い専門分野間に見えざる壁ができ上がり、本来の生活を総合的に捉える視点を失いつつあることが危惧されています。総合的な視点を取り戻すべく、被服学関係部会合同夏季セミナーが開催されました。昨年、2回目が三島の東レ研修所で行われ、所期の目的を達成しました。総合的な視点の動きは本部会にも波及し、平成14年度の夏季セミナーは林千穂委員長のもとに被服心理学部会と合同で開催することになりました。これまで単独で開催していたセミナーとはひと味違った収穫が得られるものと期待しており、部会員の皆様と同様にセミナーへの参加を大いに楽しみにしています。合同での開催は日韓共同開催のW杯サッカーの成果を見るまでもなく、被服衛生学分野の発展に必ず寄与するものと信じています。

ところで、本会報第13号(1993年)巻頭言の中で当時の奥窪部会長が、「衣服の快適性・衛生にかかわるオーソライズされた評価法はまだ確立されていない」ことを指摘しておられます。当時、何度もうなずきながら拝見したことを思い出しています。例えば、ヒトが四肢部を被覆した衣服と被覆しない衣服の二種類を着用して冷環境に暴露された場合、被験者は四肢部を被覆した方が皮膚温は高く維持され、WarmでComfortableであると申告します。しかし、深部温は四肢部を被覆した方がより大きく低下するのです。この結果を健康面からどのように解釈すべきか評価は定まっていません。衣服とヒトの健康に関する研究を推進する被服衛生学部会にとって、評価法の確立は重要な研究課題の一つです。他にも重要な研究課題は山積しており、これらは本部会にとって宝の山ともいえるのではないでしょうか。このような宝の山問題解決のために、部会の中で年限を切った研究プロジェクトを立ち上げ、集中的な研究推進も一案だと思います。この件については、会報第15号(1995年)「部会活性化のためのアンケート結果」の中でも同様の提案がなされています。伊藤部会長のもと、「衣服と健康の科学、最前線」を走る被服衛生学部会の活動がますます発展しますよう、会員の皆様のご指導、ご協力を切に願う次第です。

本年も情報満載の会報第22号をお届けできることを嬉しく思います。ご執筆いただいた方々、および編集幹事の皆様に改めて厚く御礼を申し上げます。

関連記事

  1. 第32号 総説

  2. 第34号 役員名簿(深沢先生)

  3. 23巻 巻頭言-被服衛生学における形式知と暗黙知

  4. 第32号 セミナー報告 第31回

  5. 30号 海外レポート

  6. 26巻 研究室紹介-ユニチャーム生活科学研究所

  7. 第33号 部会規約

  8. 第33号 著書紹介

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。