21巻 研究室紹介-実践女子大学材料物理研究室

【21号,研究室紹介】

実践女子大学材料物理研究室

 

実践女子大学 鎌田佳伸

[はじめに] 実践女子大学は東京は日野にあり、番地が大坂上というように、日野駅からかなりの坂道を10分チョット登り切った所にあります。歩くと健康には大変よいと言われますが、つい・・・。 実践女子大学の研究室紹介は、飯塚幸子先生(平成12年3月退職、現実践女子大学学長)が第13号に書かれていますので、今回が2回目となります。我が「材料物理研究室」は糸や布といった繊維材料の物理的性質、機械的性質について教育研究する研究室でありまして、「被服衛生学」の研究室ではありません。しかし、研究テーマの中には、後述するように被服衛生学的テーマもありますし、また被服衛生学の立場から見ても被服材料の測定に役に立つ機器が多数あります。

[設備] 学生実験室に付属して、20℃,65%RHにコントロールされた恒温恒湿室が当研究室の管理下にあります。これは、平成11年8月に改築されたものでおよそ30㎡あります。恒温恒湿室中に設置されている設備は、KESと引張試験機、その他諸々です(写真参照)。KESに関しては、布の曲げや布の表面等の布の力学的風合い試験機と布の通気性や保温性等の温熱関係の測定機が完備ししています。引張試験機はテンシロン3台が常時稼働していて、繊維、糸そして布など、最大荷重1トンまで測定可能で、自動計測もできます。また、ASTMの保温性試験機やドレープテスタもあります。これらは、修論や卒論のみならず、必要に応じて学部の学生実験においても活用しています。恒温恒湿室外には、その他の一級衣料管理士の資格取得に必要な繊維材料の通常の実験機器も多数あります。また、最近の購入物品には、帯電圧測定機と静電気除去装置(キーエンス)、揺動マネキン(カトウテック特注)とその運動状況を観測するストロボ装置(菅原制作所)、また、デジタルマイクロスコープ(キーエンス)、などがあります。部会員の皆様にこのような機器についてご利用要求がござい ますならばご協力できるかと存じます。また、本学科には染色・洗浄・環境の「生活環境管理研究室(小見山研)」、繊維高分子材料の「材料化学研究室(城島研)」という研究室があり、実践女子大学はテキスタイル材料に関する教育研究の環境は大いに充実していると自負しております。

[研究] 当研究室では、私たちの生活にとって欠かせない衣・食・住の中で、特に人間固有の「衣」について研究しているわけですが、研究テーマは次の3種に分類できます。

1.布等の物理的・機械的性質に関する研究
:当研究室のメインテーマです。衣服材料について身近な問題や疑問をテーマにした研究をしています。一例を挙げますと、最近、特に興味をもっていますのは、寒い時期に発生する静電気を除去する縫糸の開発です。この研究ににサンダーロンという導電性繊維を活用をしていますが、この繊維は染色性に難があり、また極めて高価です。そこで、少量のサンダーロン繊維を他繊維と複合させた縫糸で制電性が十分に得られる縫糸構造はどのようなものかを研究しています。また、そのような縫糸をどのように使用したならば、例えばスカートのまとわり付きの解消になるかも研究しています。もう一つの研究例を上げます。カシミヤ製品は一般に「暖かい」と言われています。アンケート調査でも、また官能検査でも、羊毛と比較して確かにカシミヤは暖かいという結果がでました。しかし、温熱の物理的測定では、カシミヤと羊毛とでは違いが認められませんでした。現在、この謎を追究しています。

2.衣環境に関する研究:
今から5年ほど前に香川大学において、衣服内の熱と水分移動現象を数値シミュレーションで検討することをしていました。実践女子大学ではコンピュータの利用環境が整わないことから休眠していましたが、最近はパソコンの性能が格段にアップしてきましたので、今年度から再開致しました。

3.ミシン縫製の研究:
例えば、薄く柔らかい布をきれいに縫い上げることは大変難しいことですが、それは何故でしょうか。精密機械であるミシンと何ともつかみ所のない布・糸との合作である縫いのこのような問題を調べ、その理由と共にミシンの改善、縫製技術の向上を提案しています。この研究は、私のライフワークです。 被服衛生学は、衣(広義には生活空間と考えてもよいかも)によって囲われた人の身近な環境を理解し、人にとってよりよい環境を構築する学問と考えています。しかし、その切り口は多岐にわたっています。人を主体として研究することが被服衛生学の王道でありましょう。しかし、それだけではなかなか理解できない現象を明らかにするためには、人を取り囲んでいる(微)空間や衣に標準を合わせた研究が勝っていることもありましょう。また、人という生体を直に扱った研究に対して、マネキンのように形だけ人に似せたものを用いた研究手法、さらには、物理現象を明確に知るために形状を単純化したモデルによる研究手法なども併せて重要になると考えます。上記の研究の1と2はそのような意味で被服衛生学の研究とも私は考えています。

[その他] 連絡先 鎌田佳伸
実践女子大学生活科学部生活環境学科材料物理研究室
〒191-8510 日野市大坂上4-1-1 研究室
Tel/Fax: 042-585-8898
E-mail:ykamata@beige.ocn.ne.jp,
URL: 縫製研究会http://www6.ocn.ne.jp/~k-labo/housei/h-top/index.htm
感覚と計測研究委員会http://www07.u-page.so-net.ne.jp/jd5/fiber/fiberkankaku.htm

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