21巻 海外レポート-1

【21号、海外レポート】

 

ノースカロライナ州立大学繊維学部の繊維・アパレルマネージメント教育

 

県立新潟女子短期大学 生活科学科  菅井 清美

 

  平成11年8月中旬から1年間、文部省在外研究員として米国ノースカロライナ州立大学繊維学部で研修する機会を得た。繊維学部教育や自己研修、各種学会やワークショップへの参加、ユニークな日常生活などのなかから、ここではわが国の繊維教育に比べマネージメントにもかなり重きをおいているといわれている繊維・アパレルの技術とマネージメント学科の教育内容を記すとともに、このような研修と報告の機会が得られたことに感謝したい。

 

 米国の州立大学はランドグラント大学とも呼ばれ、地域の社会的要請に応じた教育・研究を行う組織としての使命を持っており、その伝統が今日まで受け継がれている。繊維産業界の不況や大学の経済的自立化圧力等を経験した米国繊維教育は、州の社会状況や傾向、将来の展望を考慮しながらこの10年間にもさまざまな学部改革を行ってきている。1989年には繊維化学、繊維工学、繊維科学を統合してDepartment of Textile Engineering, Chemistry and Scienceと名付け、繊維マネージメントテクノロジは繊維・アパレルマネージメントと改称した。91年には、すでにあるFiber and Polymer ScienceのPhD 課程に加えて、Textile Technology ManagementのPhD課程を新設し、97年にはTextile and Apparel Technology and Management学科を創設して、現在の二学科体制とした。一方、十分な研究・教育予算を確保するために、91年にはNational Textile Centerの設立に参加して商務省からの継続的な予算を獲得し、93年にはAMTEXパートナーシップを他大学、研究所、産業界との間で結んでいる。

 

 こうした変化は、大学の創立100周年を記念して作られたセンテニアルキャンパスへの学部移転によるところも大きい。特に新校舎の地下全域を占めるモデル工場には、繊維の紡糸から最終製品までの一連の製造工程が研修できる最新の繊維機械が整備されて実践的な教育・研究が行われ、産業界や行政との研究協力も非常に容易となり、多数の産学協同研究プロジェクトが押し進められている。また、大学のこれらの施設や人材を活用したExtension 活動には、技術や操作を学ぶために98年度には北米全体から800人以上の受講生が参加している。日本ではこの7月6日に厚生労働省と文部科学省の連携協議会で基本合意した大学・大学院を活用した職業訓練の拡充を、すでに大規模に実施している良い例である。

 

 現在、ノースカロライナ州立大学繊維学部はTextile and Apparel Technology and Management(TATM) とTextile Engineering, Chemistry and Science(TECS) の二つの学科を擁し、非常に幅広いカリキュラムの選択ができるようになっているが、家政系や生活科学系での繊維・アパレル教育や人材育成により関連深いTATM学科のカリキュラムについて以下に概括する。

 

 TATM学科はTextile TechnologyとTechnology Managementの専門分野に細分化されている。Textile Technology課程では基礎的な化学、物理、数学、統計学を学び、専門として繊維、糸、織編物のテクノロジや製造工程について修得する。カリキュラムの範囲は、①繊維製造工程、②繊維から糸までの工程のテクノロジ、③不織布のテクノロジとその応用、④糸から織編物までの工程のテクノロジ、⑤染色と後加工工程のテクノロジ、⑥テキスタイル構造のデザイン、⑦アパレル製造、⑧テキスタイル製品とその工程の品質管理やマネージメント、⑨糸や織編物、不織布の特性やその応用、⑩製品開発や工程の最適化、⑪関連する化学、物理、数学、統計学の基礎学理である。1年生で29~30単位(11科目)、2年生で31単位(10科目)、3年生で32単位(10科目)、4年生で27単位(9科目)が卒業のための最低必要時間である。

 

 Textile and Apparel Management課程では、物理科学、行動科学、数理科学など幅広く学習するが、具体的なカリキュラムの範囲は、①繊維から糸までの工程のテクノロジ、②糸から織編物までの工程のテクノロジ、③染色と後加工工程のテクノロジ、④織編物の特性と応用、⑤アパレルテクノロジマネジメントへの導入、⑥経済とビジネスコース、⑦ビジネス環境での会計学の基礎、⑧織物製品の流通経路におけるテキスタイル製品のマーケティング、⑨テキスタイルやアパレルビジネスを創造するための戦略上重要な決定の応用、⑩経済学、ビジネス、会計学の基礎教養や化学、物理、数学、統計学の基礎学理。アパレルマネージメントに重点を置くコースでは1年生で32単位(13科目)、2年生で31単位(10科目)、3年生で31単位(10科目)、4年生で27単位(9科目)が卒業のための最低必要時間である。なお、大部分の科目は3単位で構成されているのでひとつの科目に要する時間が長く、時間外学習の課題や小テストも多く、しっかり修得する仕組みになっている。繊維マネージメントのコースでは5年のEli Whitney programがあり、海外での訓練によって幅広い仕事を選択することもできるようになっている。

 

 一方、日本においても高度成長期以後の繊維産業構造の変化とともに、教育現場も変わらざるを得なくなった。①繊維関連産業は生産中心から開発中心に移行していること、②繊維工学の産業における領域が衣料中心から産業用繊維や医療用繊維へと拡大を続けていて、これら多岐にわたる産業用繊維の具体的なすべての技術を学部教育で修得させるのは困難であり、結果として③技術者の現場的な知識の修得は企業内に求め、大学ではむしろ応用分野や新分野に取り組める基礎専門知識を十分身に付けるのが望ましい、などを考慮して、学部では基礎教育、大学院では専門教育に重点を置くという今日の繊維関連教育の方向性が整えられている。こうした現状を踏まえて家政学系、生活科学系での繊維・アパレル教育、人材育成を考えていく必要があるといえる。私たちが今後どのような教育を行い、地域に貢献するかをあらためて問い直していく際に、ノースカロライナ州立大学繊維学部の繊維・アパレルマネージメント教育の在り方は参考になると思われる。

関連記事

  1. 27巻 巻頭言-「裸のサル」から「ウェアラブルコンピュ-タを着たヒト」…

  2. 第31号 海外レポート

  3. 第34号 「編集後記」(與倉先生)

  4. 第31号 会計報告

  5. 部会誌35号短報論文

  6. 26巻 海外レポート-2

  7. 第24回 日本家政学会被服衛生学部会 夏季セミナーのご報告

  8. 第32号 巻頭言

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。